シリーズ「これからのヘアサロンを考える」2NRA代表インタビュー
『思いが叶うヘアサロン』とは?

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切れ毛などの髪のダメージが気になり、大切に伸ばしてきたロングヘアを、仕方なくカットした経験はありませんか?

もしもあなたが、正しい美容の知識と技術を身につけた美容師に出会えていたら、「ヘアカラーで補修すれば、切らなくてすみますよ」と教えてもらえたかもしれません。実はみなさんが想像している以上に、美容師にできることはたくさんあります。

誰もがなりたい髪になれるように、真の美容技術を広めていきたい…それが
NRA(一般社団法人全国美容研究協会)の活動です。

シリーズ『これからのヘアサロンを考える』では、NRAが考える、本来あるべき美容技術について、少しずつご紹介していきます。

第2回は、NRA代表理事であり、美容師やヘアスタイリストとして究極のヘアメイク技術を実践してきた、平澤敏明のインタビューをお届けします。
第1回:髪の悩み多き大人女子が『NRAのヘアメイク』を体験もご覧くださいね。)

写真:平澤のバストショット
NRA(一般社団法人全国美容研究協会)代表理事の平澤敏明

美容師のみなさんに
伝えたいこと

Ann

みなさんこんにちは!剛毛ライターのAnnです。長年、髪の広がりやうねりに悩んでいた私ですが、NRAを主宰する平澤さんの美容理論を知って目からウロコが落ちました。

そこで今日は、みなさんに平澤さんのインタビューをお届けしたいと思います。平澤さん、よろしくお願いします。

Hirasawa
はい、よろしくお願いします。早速だけどAnnさん、女性って普段どういうときに美容室に行くんでしょうね?
Ann
失恋したとき…じゃなくて(笑)。もっと現実的に髪が伸びたので切りたいとか、白髪が目立ってきたから染めたい、とかですかね。
Hirasawa

ですよね?

ヘアサロンとは本来、『綺麗な髪になれるから行く』場所ですが、そのような高い満足感が得られるヘアサロンは数が少ないんです。だから、みなさんは、もっと素敵になれるからというポジティブな理由ではなく、そろそろ行かなきゃ仕方がない、というネガティブな理由でヘアサロンに行っていると思うんです。

Ann
美容室に行く動機がネガティブ…。言われてみると、そうかもしれません。
Hirasawa
私はそこが大問題だと思っていて、全国の美容師にはこの問題にきちんと向き合って欲しいんです! だいたい、今の美容師は、昔と比べるとかなり勉強不足だとも感じています。
Ann
おっと、いきなり苦言が来ましたね!
Hirasawa

すいません(笑)

まあそれは、ヘアサロンの全体数が増えていくなかで、量産型というか、効率的で無難というか、画一的なサービスで商売を成り立たせる店が大勢を占めるようになったことが一因としてあるんですけどね。

Ann
なるほど。昔よりも美容師さんがマニュアル化してしまった感じですかね。
Hirasawa
でも現実には、100人いれば100通りの髪質や悩みがあるわけですから、美容のプロとして本気で役に立ちたいなら、お客様が“本当は何を望んでいるのか”真剣に考えて欲しいのです。画一的な技術では、1人ひとり違う髪の悩みを解決することはできません。
Ann
たしかにそうですね。
Hirasawa
本来はケースバイケースで薬剤や技術を工夫する必要がありますし、そのためには、毛髪科学やケミカルについてもっともっと勉強しなければならないはずです。
Ann

う〜ん…私がそうなのですが、剛毛だったりクセ毛だったり、扱いにくい髪質の人は、半ばあきらめているのではないでしょうか?長年、髪のことで悩んでいても、たまにしか会わない美容師さんには他人事だろうし、実際に理解してもらえないこともありますから。

Hirasawa
美容師に髪の悩みを理解してもらえなくて、結局、望むような髪になれないものだから、ヘアサロンに期待しなくなるのでしょうね。その証拠に、髪の綺麗な人に「どこのシャンプーを使ったの?」と聞くことはあっても、「どこの美容院に行ったの?」とはあまり聞かないものです。
Ann
思い当たります(笑)。
Hirasawa
美容師も、お客様の 満足度が低下していることを分かっていますが、不安な気持ちをかかえたまま、やはり “仕方なく”、型通りの技術を提供している面があると思います。
Ann
美容師さんもツライところですね…。
Hirasawa

ただ、本当の実力はそんなもんじゃないだろうと。

私の心のなかには、「美容師ってすごい仕事だよ! もっと勉強してもっと楽しもうよ!」という強い気持ちがあります。美容師の技術はとても高度で、きっと人工知能にも奪われない、世界に通用するクリエイティブな仕事の1つだと信じています。もっと勉強しさえすれば、どんな髪質でも綺麗にしてあげることができるのだから、根底からしっかりやろうよと。そんな思いで立ち上げたのが、NRAなんです。

Ann
そうだったのか…なんだか親心を感じますね。
平澤さんも、もともと美容師ですか?
Hirasawa

そうです。もう40年ほど前のことになりますが、純粋なヘアスタイリストを目指すというよりは、美容業界で面白いことをやってやろうと。わりと理系脳だったから、最初から毛髪科学をみっちりと勉強しました。

その後、パーマなどの業務用薬剤の研究開発にも携わりましたし、タレントのヘアメイクを裏方としてやっていた時期もあるんですよ。

Ann
えー、タレントさんの髪を!!
Hirasawa

そうなんです。

Annさん、芸能人って頻繁にヘアスタイルやカラーを変えますよね? でもそれが原因で髪を傷めるわけにはいかないんです。そして、どんな髪質であっても、どんなに時間がかかっても、素晴らしく見栄えの良いヘアスタイルにするために、毛髪科学の知識や高度な美容技術を総動員して対応しているんです。

たとえるなら、F1レースのピットクルーみたいな感じですね。

Ann
なるほどー!そこまで高度な美容技術を実践してきた経験があるからこそ、「美容師なら、どんな髪質でも綺麗にしてあげられるはず」と、きっぱり言うことができるのですね。

目指しているのは、
毎日を少しでも幸せ
に感じてもらうこと

Ann
しかし、平澤さんの言う、F1レースのピットクルー的な美容技術を、まちの美容室でそのまま提供することは難しいですよね? 単純に考えて、コストがものすごく高くなりそうな…。
Hirasawa

その通りなんです。私の考えている美容理論をどうやったら一般的な美容室のメニューに落とし込めるのか、ずいぶんと試行錯誤を重ねました。

現在は各方面にご協力いただきながら、大学の先生と一緒に薬剤を開発したり、現役の美容師に技術指導をしたりと、現場をサポートできるような美容技術の研究とチームの育成に取り組んでいます。少しずつ、これからのヘアサロン向けのメソッドも編み出していますよ 。

Ann
これからのヘアサロン向けのメソッド!どんなものですか?
Hirasawa
たとえば、『1人ひとりに合わせた髪のベースメイク』というメソッド。髪型をつくるのはカットやデザインですが、その前に、毛髪という個性的な素材をどうやったら素敵に調理できるかな? という発想を持つことはとても重要です。
Ann
そうですよね。
Hirasawa
そこで、カウンセリング視点と、パーマの技術と、トリートメントの技術を組み合わせて、理想的な髪質にコントロールする方法を考えました。確かな裏付けのある独自のメソッドを、NRAの活動に共感してくれた全国の美容師に、惜しみなく伝えていきたいと思っています。
Ann

平澤さんの40年越えの経験をギュッと凝縮したメソッドですよね、太っ腹!

私も先日、初めて『髪のベースメイク』を体験しましたが、髪の手触りが別人みたいにやわらかくなって、ヘアケアが簡単になりました。

一番、嬉しかったのは、家族に「出かけよう」と急に言われたときにパパッと外出できること。以前は、髪の毛を洗い直すか、結ぶかしないと外出する気にならないくらい、髪の毛が広がったりはねたりしていましたから。ずぼらな私が外出をためらわなくなったので、家族にも好評ですよ。

画像:Annの施術前(左)と施術後(右)
インタビュアーのAnn、第1回:髪の悩み多き大人女子が『NRAのヘアメイク』を体験の体験レポートでの施術前(左)と施術後(右)。この写真を自分で見ると、今までの苦労のあれこれが、あらためて思い出されてくる。
Hirasawa

それはよかった! 私たちの一番の目的は、新しい薬剤やメソッドを開発することではなく、みなさんに喜んでもらって、毎日を少しでも幸せに感じてもらうことなんですから。

そういえば以前、「美容室のヘアカラーがいまいちで、自分でがんばって工夫している」、というお客様に『髪を綺麗にするベースメイクカラー』を提供したところ、鏡を見て泣き出したことがありました。泣くほど喜ばれる仕事なんて、美容師は最高ですよね。

Ann
…泣くほど綺麗になれるヘアカラーなんて、聞いたことないですよ?
Hirasawa
Annさん、美容室のメニューのなかで、髪を一番綺麗にできるのは何だと思いますか?
Ann
なんだろう…トリートメントでしょうか?
Hirasawa
いやいや、答えは、断然ヘアカラーですよ。
Ann
え〜!本当ですかぁ?
Hirasawa

確かに一般的には髪を傷める最大の原因はヘアカラーです。特に明るい白髪染めは一番髪が傷みます。

多くの方が年齢のせいだと思っていますが、年齢とは関係なくカラーが原因で髪にボリュームやハリ・ツヤがなくなっている方がほとんどです。

Ann
やっぱり!というか、ヘアカラーのせいで髪のボリュームが減っちゃうなんて最悪じゃないですか!
Hirasawa

まぁまぁ、最後まで聞いてください(笑)。その一方で、髪を最も修復できるのも実はカラーなんですよ。矛盾してますよね。

カラーをするとなぜ傷むのか、どうしたら髪を修復できるのか。悩んだ結果、薬剤を変えようとする美容師は少なくありません。

しかし、このトリートメントを入れれば簡単に傷まなくなるよ、という『魔法の薬』はあり得ません。だから、カラーによって傷む理由や修復できるメカニックを知り、それに対応できる技術を習得して、『美容師自身が魔法使い』になることが正解なんです。そこまで技術を高めないと、本物のカラーはできません。

Ann
魔法使い、ですか……。
Hirasawa
そうです!カラーの仕組みを知り薬剤を使いこなせば髪を健やかに整え、美しさを長持ちさせることが可能となり、そうでなければかえって髪を傷めてしまう。だから、髪を最も傷めるのもヘアカラーだし、髪を最も綺麗にできるのもヘアカラー、というわけです。
Ann
ヘアカラーのこと誤解していたかも…今までの自分の知識と全く違うので、本当にびっくりです。
Hirasawa

でしょうね〜。それで、もしも美容師が『髪を綺麗にするベースメイクカラー』を習得していたら、傷んだロングヘアを泣く泣く切るしかないと思い込んでいるお客様に、「ヘアカラーで補修すれば、切らなくてすみますよ」と提案することができますよね。

そんなふうに、美容師にもお客様にも、ヘアサロンで実はこんなことができるよ、髪はもっと綺麗になれる可能性があるよ、ということを、NRAの活動を通じて伝えていきたいと思っています。

痛みの気になるロングヘア、『髪を綺麗にするベースメイクカラー』でこんなにきれいになりました。
うねり、クセが気になるロングヘア(左)と、ベースメイクカラー後の艶やかなストレートロング(右)
気になるクセやうねりもリセットされ、さらりとツヤ感あるストレートに。

ヘアサロンは
『思いを叶える』
というメニューで
勝負するべき

Ann
そういえば、私のいきつけの美容室には『髪のベースメイク』とか『髪を綺麗にするベースメイクカラー』というメニューはなかったと思います。お店のメニューになければ、美容師がそれをおすすめすることも、顧客がオーダーすることもできませんよね。
Hirasawa
そうですね。ただ、髪のベースメイクという呼び方も便宜上必要なだけで、そもそも、美容室にメニューがあること自体がおかしいのではないでしょうか? 私は常々、すべてのヘアサロンが『思いを叶える』というメニュー1本で勝負すればいいのに、と思っています。
Ann
思いを叶えるメニュー。
Hirasawa
風邪で医者にかかったときのことを想像してみてください。患者さんの願いは、「風邪を治したい」ですよね? それなのに医者が診断もしないで、「今日は入院しますか? 薬はAとBとCがあるけど、どれがいいですか?」って聞いたらびっくりするでしょう。
Ann
そんな医者いやです(笑)。
Hirasawa
私からみれば、ろくにカウンセリングもしない美容師が、「今日は何のメニューにしますか? カット? それともパーマ?」って聞くことは同じような暴挙です。美容師の意識改革のためにも、ヘアサロンには『思いを叶える』というメニューを絶対につくるべきだと思いますよ。

一流の美容師に
なれる人と、
なれない人の違い

Ann
平澤さんのお話からは、美容師さんへの愛とムチがびしびし伝わってきますね。平澤さんが若手にアドバイスをするとしたら、『一流の美容師の条件』とは、なんだと思いますか?
Hirasawa
まず、勉強しようという意欲のある人。手間がかかるとか、薬剤の値段がいくらだとか、そういうことだけ気にする美容師には、「あなたが目指しているのはファーストフード店? それとも3つ星レストラン?」って問いただしたくなってしまう。私は3つ星レストランを目指している人と仲間になりたいです。
ただ、正しい毛髪科学や美容技術を学ぶだけでは、良い美容師にはなれません。
Ann
技術だけじゃダメだよ、ってやつですね?
Hirasawa
やっぱり、勉強以上に大切なことってあるんです。美容師のなかには、「髪の毛を3cm位切ってほしい」と言われて、3cm切ることに一生懸命になってしまう人が結構います。でも本当は、そのお客様は髪の長さを変えたいわけではないかもしれない。言葉通りに受け取らず、お客様の真の思いはどこにあるか。そこに気づけるかどうかがポイントです。
Ann
なるほど。枝毛を気にして、本当は切りたくないけど、毛先だけ綺麗にするためには3cm位切って…と思った可能性もありますよね。
Hirasawa
そうなんです。ようするに、一番大事なことは、相手を思いやる気持ちです。
「本当はこの人、何を悩んでいるのかな」と考えて、「こうしたらもっと良くなるよ」と本物の技術を提供できる人が、一流の美容師だと思います。
Ann
聞いていると、美容師ってカウンセラーみたいですね…。
Hirasawa

まさにそうあって欲しいですね。

NRAでは、新しい薬剤や美容技術の研究開発をすすめていますが、薬剤や技術は手段にすぎません。「これで誰々さんの髪の毛を綺麗にしてあげられるぞ」と、相手の名前や顔を思い浮かべてワクワクできる美容師が増えていくといいなと思っています。

そのために、まだまだ私も一生勉強していきますし、一緒に勉強してくれる仲間との出会いを、これからも楽しみにしています。

Ann
あ〜、なんだかワクワクしてきました!
私もヘアサロンを利用するユーザーの1人として、「思いを叶えるメニュー」が世の中の当たり前になっていくことを期待しています。本日は、ありがとうございました。
NRAの勉強会風景:1人ひとりに合わせた美容施術を行なうため、全国の美容師間で検証データを共有し、施術上の課題についてディスカッションを行なっています。写真は、さまざまなヘアカラーを使ったテスト結果を検証している様子です。

COLUMN
NRAのメソッドについて

パーマ技術は奥が深く、さまざま選択肢がありますが、苦手意識を持っている美容師がたくさんいます。パーマがかからなくて顧客から不評を買ったり、薬剤の処置時間が長引いて髪にダメージを与えてしまったりしないために、個々に合わせた有効な施術方法を知ることが大切です。NRAでは、従来のパーマ技術とは一線を画す独自のメソッドを開発し、確かな技術の普及を目指しています。

画像:加齢による『髪質変化』でクセが強くなり傷んだように見える70歳女性の髪、サイドの施術前(左)施術後(右)
髪のベースメイク施術の例:加齢による『髪質変化』でクセが強くなり傷んだように見える70歳女性の髪。ベースメイク施術後は若々しい髪を取り戻すことができた。
ダメージを受けた髪の顕微鏡写真
ダメージを受けた髪の表面(写真撮影:鳥取大学)
ベースメイクによって補修された髪の顕微鏡写真
ダメージヘアが『髪のベースメイク』施術によって補修された例(写真撮影:鳥取大学)

COLUMN
NRAの研究活動について

私たちは鳥取大学の伊福先生に研究顧問となっていただき、大学とも共同研究をしています。
鳥取大学の特許技術によりカニ殻などの甲殻類の外皮から製造された極細(10~20nm)のキチンナノファイバー(マリンナノファイバー)は生理活性作用があり、私たち髪や肌にたずさわる者にとって興味深く、とても大きな可能性を感じたため共同研究に参加させていただきました。
現段階でも今までにない結果を見出し、私たちにとって欠かせないものになっています。
引き続き、あらゆる分野で大きな可能性のあるマリンナノファイバーが活躍することのお手伝いができればと思っています。

図:(左)キチンナノファイバー塗布24h経過後のヒト皮膚の状態写真(無処理と比べ、顆粒豊富、構造保持)(右)肌水分量(%)グラフ1h、4h、8h後全て無処理よりキチンナノファイバーの方が上回っている
マリンナノファイバーのバリア機能と保湿効果
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  • 著者 hair@master
  • カテゴリー インタビュー